『おしいれじいさん』(福音館書店)
最近は心身ともに疲れていて、いろんな意味で余裕がなかったのだが、今日は時間ができたので、久しぶりにゆっくり絵本に向き合ってみる。今日紹介するのはななちが幼稚園生の時、福音館書店の購読絵本として買った『おしいれじいさん』。
ヒンヤリと暗いおしいれの中には「おしいれじいさん」が住んでいる。このおしいれじいさんは、昼間は布団で寝ているのだが、夜になって人間が布団をおしいれから出すと、起き出し、おしいれの中で遊びはじめる…というストーリー。表紙には、おしいれの隙間からこちらを横目で眺めているおしいれじいさんが描かれている。ちょっとホラーっぽい印象だが、読んでみると、全くそんなことはない。
ちょうちんあんこうのような姿をしたおしいれじいさんは、おでこのライトをつけて「あさまで なにをして あそぶかなあ」と呟きながら、おしいれの中を泳いで回る。おしいれの中には囲碁セットやけん玉、裁縫道具、古いおもちゃに読まなくなった本などが詰まっている。残念ながら、私の家にはおしいれがなかったが、祖母の家のおしいれはまさにこんな感じだった。
ある日、いつものように、おしいれの中を泳いでいたじいさんは、古い釣竿を発見し、それで「おおもの」を釣り上げようと、竿を振り下ろす。しかし、何度やっても釣れるのはハンガーやら長靴やら、破れた凧などのガラクタばかり。諦めかけたその時、段ボールの隙間に入った針が、何かをひっかけた。今までとは明らかに違う手応えに、これはもしかしておおものがひっかかったのではないかと興奮するじいさん。ありったけの力を振り絞ってじいさんが釣り上げたものは…。
暗くてちょっと怖いけれど、色々なものが詰まっていて、秘密基地みたいな、魅力いっぱいのおしいれ。一見怖そうに見えるけれど、よく見ると表情豊かで愛嬌のあるおしいれじいさんは、まさに「おしいれ」を具現化したものなのだと思う。
ななちも表紙を見た時は「怖そうだからやだ」と言っていたが、一度読み聞かせると、すっかり好きになり、繰り返し、繰り返し読まされた。そして、時を同じくして釣ブームに突入していた夫と共に、釣り堀に出かけるようになった。
2015.4.20投稿