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雨穴『変な絵』(双葉社)

『変な絵』(双葉社)

今年最初の書評はウェブライター兼YouTuberの雨穴氏による小説『変な絵』。 書店でも平積みされているくらいの人気で、若者を中心に多く読まれているようだ。謎解き要素も多いのでミステリ小説とも言えそうだが、ミステリファンの人にとってはトリックが粗いと感じる箇所があるかもしれない。個人的にはホラー小説として読んだ方が素直に楽しめると思う。

私が雨穴氏を知ったのはオモコロの「爪あつめ」の記事である。商店街のおもちゃ屋さんで見つけたというボードゲームを紹介するブログ記事だ。淡々とゲームとその遊び方を紹介している記事なのだが、何しろ不気味なのである。ゲームの道具も、そのルールも。そしてブログの最後には「追記」という形で、このゲームと関係がありそうな研究者の記述が掲載されている。

この話はフィクションなのか。だとしたらどこまでが創作なのか。たった1ページのブログ記事にも関わらず、小道具の作り込みが半端ないために現実と創作の境界がわからない。それ故、読んだ後もうっすらと不気味な感じが残り続ける珍しい作品だった。

今回の『変な絵』も、作中に出てくるブログ「七篠レン 心の日記」を実在させることにより、作品の世界と現実の世界をリンクさせている。アメブロでよく見かける個人の近況報告ブログといった形で登場人物に心境を語らせることにより「レン」とその妻の存在にリアリティを持たせ、親近感を抱かせる。「レン」を身近に感じるようになればなるほど、その顛末は生々しいものとなり、ゾッとする読後感が残る。

『変な絵』の第1章は雨穴氏のYoutubeチャンネルでドラマ化されたものを配信している。第1章だけでも一つの物語として完成しているのだが、ぜひ小説を買って全章を通して読んでもらいたい。「七篠レン 心の日記」Youtubeのドラマに散りばめられてさまざまな伏線が綺麗に繋がり、ゾッとする。

雨穴氏はブログ、Youtubeなど現実と虚構が入り乱れるインターネットを上手く活用することにより、今までとは一味違った読書体験を提供する、新時代の作家さんだと思う。今後の作品も楽しみだ。

2023.4.3投稿

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