アシダカグモ再び
昨夜習い事から帰ってきて、夕飯の準備をしようとキッチンに入ったところ、シンクの横を何かが横切り、鍋の陰に消えた。薄茶色で細かったのでゴキではない。でもゴキ並みの移動スピードを持つもの。あいつしかいないと私は確信した。
覚悟を決めてそーっと鍋をどかすと、ものすごいスピードでそいつが壁をよじ登ってきた。アシダカグモだ。
遭遇するのは二度目。ゴキを退治してくれる益虫であるのだが…キッチンで一緒に暮らすのはちょっとご遠慮願いたいサイズだ。それに、ななちは大の蜘蛛嫌い。ミミズやダンゴムシと仲良く触れ合えるななちだが、小さい頃うっかり蜘蛛の巣に顔を突っ込んだのがトラウマとなり蜘蛛だけはダメになってしまった。ななちにバレないようになんとか外に出さなくては…と考えているところにタイミング悪くキッチンに入ってきたななち。初めて見るアシダカグモに半狂乱となった。
気分的には私も半狂乱になりたいところだが、あいにく夫は飲み会で帰りは夜中。今私がなんとかしなくてはご飯が食べられない。とりあえず虫取り網で捕獲しようと試みたが、相手はゴキを捕食するハンター。動きが早すぎてついていけない。
ななちは叫びっぱなしだし、お腹は空いてくるし、なんとかしなくては…。
次の瞬間、私は覚悟を決め両手を伸ばして上から蜘蛛を包み込んだ。手のひらサイズのアシダカさんがすっぽり収まった。
ななちに向かって「キッチンのドアを開けろー!」と叫ぶ。
ぎょっとしたななちが騒ぐのをやめ、勝手口の扉を開けてくれたので、そこからアシダカさんを外に放った。
ハエトリグモはしょっちゅう捕まえているので、素手でならいけるという自信はあったのだが…あのサイズの蜘蛛を手で触るのはかなりきつかった。ふかふかしたモールのような足の触感が、まだ手に残っている。もう二度とできない。というか、なんであんなことができたのか今となってはわからない。「火事場のくそ力」みたいなものだったのだろうか。
友達に話したところ、「殺虫剤なかったの?」と驚かれた。そう言われて初めて、蜘蛛を退治するという発想が全くなかったことに気がついた。あのサイズでも、とにかく生きたまま、外に出すことしか考えていなかった。基本的に益虫だし、なんとなくバチが当たりそうだし…。おそらく『蜘蛛の糸』の影響だろう。
殺さず外に逃がしてあげたから、あの世に行ったら助けてくれるかもしれない。(とりあえず家の周りで害虫を退治してくれるだけでもいいや。)
2017.9.27投稿