『わたし、くわがた』(福音館書店)
今日、理科の授業で昆虫観察を行うため、自慢のクワガタムシを学校に連れて行ったななち。休み時間には、お友達のクワガタムシの歩く速さを競う「クワガタレース」なるものを行ったらしい。そんな訳で、今日紹介するのは、こちらの絵本。
この絵本は、以前紹介した『ぼく、だんごむし』を書いた得田之久氏による作品だ。夏の人気者、クワガタムシの生態を、柔らかい話ことばと、温かいタッチのイラストで解説しているものだが、特に「メスのクワガタムシ」に焦点を当てているところに特徴がある。
子供達に人気なのは、大きなクワのようなあごを持っていて、カブトムシとも互角に戦うことのできるオスのクワガタムシだろう。図鑑の表紙を飾るのも、ポスターの主役になるのも、メスではなく、オスのクワガタムシであることからも、それは明らかだ。オスよりもひと回り小型で、大きなクワも持たないメスのクワガタムシは、パッと見た感じコガネムシのような印象であるため、あまり「華」がないのである。
そんな、普段注目されることのないメスのクワガタムシ目線で語られているところが、この絵本の面白いところだと思う。メスのクワガタムシは、小さいけれど、朽木に卵を産み付けるための穴を開けることができるくらい強い力のあご持っていること、メスは体が小さいため、オスよりも外敵に見つかりにくいこと、メスはあまり場所争いの喧嘩をしないため、効率良く多くの樹液を吸っていること…などなど、メスのクワガタムシの知られざる能力が紹介されている。
また、樹液はカミキリムシが産卵のために木を傷つけることによって出ること、その傷を蛾の幼虫やメスのクワガタムシかじることによって、樹液が出やすくなること…など、大人も「知らなかった!」と驚くような解説もある。文章は柔らかいが、細かいところもしっかりと解説されているため、子供だけでなく、大人も楽しめる内容だと思う。
2015.9.15投稿