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『ムーミン谷の彗星』(講談社)

この本と初めて出会ったのは、確か小学校五年生の時である。図書館で「あ、ムーミンだ」と思って何気なく手に取り読み始めたのを覚えている。小さな頃、テレビで見ていた平和でのんびりとしたムーミンの物語とは全く異なるその世界に、私はあっと言う間に惹きこまれた。

近づいてくる彗星を見て「地球が滅びる」と大騒ぎのムーミン谷。ムーミントロールは、彗星を観測するために友人のスニフと共に天文台を目指して旅に出る…。ムーミントロールが、スナフキンやスノークのお嬢さんといった、ムーミンシリーズでお馴染みの仲間達と初めて出会う物語である。

物語全体に漂うのは、静けさと寂しさ。決して明るい物語ではないのに、惹きこまれていまうのは、そこに登場する者全てが、何物にも縛られず、自由であるからなのかもしれない。向こう見ずで怖いもの知らずのムーミントロール、おそろしいまでにマイペースでおっとりとしたママ、子供のようで夢見がちなパパ、臆病で欲張りなスニフ、何よりも孤独を愛するスナフキン…。強烈すぎる個性を持つキャラクター達が、それぞれお互いを受け入れながら、共存している。かと言って、皆でわいわいと仲良くし、明るく楽しく過ごしているという訳ではない。互いに深くは干渉せず、適度な距離を保ちながら、自分の個性のまま自由に生きているのだ。

物語にありがちな熱い友情や感動的な愛情はない。むしろ徹底した個人主義が貫かれれており、「結局のところ、人は孤独なものなんだ」という悟りすら感じる。それ故、この物語には静けさと寂しさが漂っているのかもしれない。しかし、冷たく突き放されている訳ではない。求めれば、皆がすっと手を差し伸べてくれるという、静かで穏やかな愛がある。
個性と自由が尊重された穏やかな世界に、癒しを感じる人は多いのではないだろうか。心が疲れてしまった時に読みたくなる本である。

2013.5.30投稿

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