『こすずめのぼうけん』(福音館書店)
飛び方を覚えたばかりのこすずめは「ぼく ひとりで、せかいじゅうを みてこられる」と調子にのり、母親との約束を破ってどんどん遠くへ飛んでいってしまう。ほどなく疲れて休みたくなったこすずめは、行く先々で出会ったいろんな鳥たちに助けを求めるがその度に「なかまじゃないから」とつき放されてしまう。
「いいえ、ぼく、ちゅん ちゅん ちゅんってきりいえないんです」というこすずめの言葉が何とも不安げで心細そうである。疲れ果てたこすずめが最後に出会ったのは…。
やさしく丁寧な言葉遣いとリアルでありながらとても温かい絵が魅力の絵本である。巣のふちに立ち、自身たっぷりに背中を反らせ羽ばたくこすずめの姿が、明日卒園を迎え、また一つ親の手から離れていくななちと重なる。これからななちは、魅力的な新しい世界に向かって力強く羽ばたいていくことだろう。その途中で躓いたり傷ついたりすることも多々あるに違いない。そんな時に「安心できる帰り場所」として母親である私を思い出してくれる…そんな親子関係を築いていけたらと思う。
2013.3.14投稿