『よるくま』(偕成社)
子供は家に帰り、ホッと心が安らいだ時にポロリと本音を言う。幼稚園から帰ってきたななちに「今日はどんな一日だった?」と聞いても「楽しかった!」というお決まりの返事しか返ってこない。しかし、二人で湯船に浸かっている時や寝る前の絵本タイムに時に「そういえば今日ね…」と幼稚園での出来事を話し始める。時には「え?そういうことは早く言ってよ!」と思うこともあるが…子供であっても安らいだ時にしか話せないこともあるのかもしれない。
「よるくま」も、そんなホッと安らいだ子供の「ママあのね…きのうのよるね」 という語りかけから始まる。お母さんとの会話形式で進むこの物語は、とても温かみがある。
水彩画で描かれた優しいタッチの「よるくま」や「ぼく」とは対象的に、背景には強い原色が多用されているため、どこか不思議で非現実的な世界になっている。子供にとって魅力的でありながら少し怖くもある「夜」、そしてお母さんが見つからない「不安」を表しているのかもしれない。
起きたらお母さんがいなかったと「ぼく」のところにやってきた「よるくま」。「ぼく」は一緒にお母さんを探してあげるため夜のまちへ出かけていく…。ちょっとドキドキする深夜の冒険のお話。夜の寝かしつけにぴったりの絵本だ。
2013.1.28投稿