『ゆうびんやのくまさん』(福音館書店)
『パンやのくまさん』と同じ「はたらくくまさん」の絵本である。絵本の舞台はクリスマスシーズン、プレゼントの配送で忙しくなる時期のお話だ。『パンやのくまさん』同様、物語に大きな緩急はなく、誠実に自分の仕事に取り組んでいるゆうびんやのくまさんの様子が、擬音と細く描き込まれた可愛らしい挿絵によって描かれている。
ゆうびんやのくまさんは、クリスマスの前の日も忙しく働いている。ポストのお手紙を集め、消印を押したり、箱から出てしまったお人形をきれいに包みなおしてあげたり、プレゼントを待つ子供達に小包を届けてあげたり。一日の仕事を終えて、家に帰るとくまさんにも小包が届いていた…。ヨーロッパやアメリカにはクリスマス・イブの24日に、郵便配達人や新聞配達人等に日頃の感謝を込めて「クリスマスチップ」という心づけを渡す習慣があるようだ。
真摯に仕事に取り組むこと、してもらった仕事に対して感謝の意を伝えること。社会生活を円滑に気持ち良く営むために大切なことは、こんなにもシンプルであるのになかなか実現できていないような気がする。可愛らしい絵と思いやりに満ちた物語が読む人を温かい気持ちにしてくれる絵本である。
2013.12.23投稿