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また留守番

先月末、父が逝ってしまった。2月上旬に肝転移が判明して以降、あれよあれよと言う間に、食べることができなくなり、体力が落ちていった。実家に見舞いに行くたびにどんどん弱っていく父の姿を見て、死の気配を感じないではなかったが、薬の副作用かもしれない、今日はちょっと疲れていたのかもしれない、と受け入れることができなかった。

三週間前までは車を運転して自分で病院に通っていた父が、自分で寝返りを打つこともできない状態で病院のベッドに横たわっているという現実を目にしても、父ならなんとか元気に回復してくれるのではないかと家族全員が希望をもっていた。しかし、そんな希望をあざ笑うかのように、父の容体は急激に悪化。誰も心の準備なんかできていない状態で、あっけなく逝ってしまった。痛みにめっぽう弱い父だったので、末期ガン特有の痛みに苦しむことなく、眠るように逝けたのは良かったと思う。しかし、残された家族はたまらない。また親子三人になってしまった。

父は仕事柄海外赴任が多く、母と私、弟の三人はいつも日本で留守番だった。私が生まれた時もいなかったし、入学式も、運動会も、演奏会も、卒業式もいなかった。思い返してみれば、父と一緒に暮らしたのはカフジで過ごした8年間と、私が社会人になってから結婚して家を出るまでの2年間だけだ。

40年間のうちのたった10年間だけ…それなのに、こんなに慕われて大事にされてきたのは、父の人柄の賜物だろう。とにかく陽気でいつも一人で話を盛り上げては「アッハッハ」と笑っていた。また、私達子供の自主性や意見を尊重してくれ、進学も就職も結婚も、選んだ道を肯定し、自由に歩ませてせてくれた。父親としては100点満点だと思う。

しかし、母にとってはどうだろう。あんなに仲良し夫婦なのに、人生の大半を離れ離れで過ごし、子供達がそれぞれ独立してこれから夫婦で楽しもう!という矢先に闘病生活が始まり、挙句の果て一人残されてしまった。あんなに「お母さん一人残していくなんてやめてよね!」とお願いしたのに、「そんなことはしない」と約束したのに、その翌日あっさり逝ってしまうなんて、夫としてあまりにもマイペースすぎないだろうか。

ほぼ一人で二人の子どもを育て上げたような母だから、心配かけまいと気丈に振る舞っているが、父の棺に抱きつきながら私もここに入ると泣き崩れたあの日の姿こそが、母の本当の気持ちなのだと思う。そんな気持ちを抱えながら、家族の思い出が溢れるあの実家で、今日も一人で過ごしているのだろうかと思うと、胸が張り裂けそうになる。毎日電話をかけ、なんだかんだと理由をつけてちょこちょこ会いにいったりはしているが、その度にどうやったって父を失った穴を埋めることはできないのだなと感じる。

全くなんてことをしてくれたんだ…お父さんのバカ。この1ヶ月間、ほぼ毎日にように父の写真にそんなことを言っているような気がする。そうすることで、自分の悲しみを紛らわそうとしているのかもしれない。そんなにバカバカ言わないで…と父にぼやかれそうだが、今は母を支えることが最優先だし、そのためには私は元気にならなくてはならない。なので、もうしばらくの間はバカバカ言わせてもらっていいよね、お父さん。その100倍くらいは感謝しているってことは、きっとわかってくれているはずだ。

レンガを買って運ぶところから手伝ってくれたうちの庭、美味しいと喜んでくれた手作りらっきょう、そしておもしろいと言って毎日のようにアクセスしてきてくれたこのブログ。どれも父を思い出して涙が出てくるので手をつけられずにいたが、父が好きだったものだからこそ、続けていった方が喜んでくれるかもしれないなと思えるようになってきた。時間はかかってもよいから、母の中で止まってしまった時間もこんな風にゆるゆると動き出してくれればと思う。

2017.4.29投稿

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