10年先を歩む推し
先月せっちゃん(斉藤和義)の21枚目のオリジナルアルバム『55 STONES』が発売された。リリース時、タイトルを見てもう55歳なんだと愕然とした。せっちゃんが55歳という事は自分は45歳という事になるからだ。全くもって信じがたい。
学生時代、吹奏楽バカだった私は音楽を聴くとしたらブラス系かオケ曲ばかりで、歌番組には全く興味がなく、流行りのJpopにも無関心だった。歌手もバンドもほとんど知らなかったし、中でもロックは全く聞いたことがなかった。そんな私が初めてハマったロックアーティストがせっちゃんである。
きっかけは学祭でみたせっちゃんのライブだ。初めて体験するロックバンドのライブ会場の熱気と歓声に圧倒されながらも、せっちゃんの歌声とギターにすっかり魅せられ、その日の帰りにCDを買った。初めてファンクラブなんてものに入会し、ライブにも通った。当時20歳の私から見た30歳のせっちゃんは、かっこいい大人の理想像であり、久しぶりに惚れ込んだ三次元の人間だった。ファンクラブのイベントに当選し、初めてせっちゃんと話し、握手とハグをした時の高揚感(今風に言うと推しが尊くて死にそうな感じ)は今でも鮮明に覚えている。
あれから25年、私も壮年期に突入した。就職、結婚、出産、子育てと様々な経験をする中で価値観や考え方も変化し、聞かなくなった音楽や昔ほど好きではなくなってしまったアーティスも出てきた。しかし、せっちゃんだけは変わらず好きで、歌も古いものも新曲も心地よく聴くことができる。根本的に声質とサウンドが好きというのもあるが、せっちゃんが魅力的な歳の重ね方をしているから、という部分も大きいと思う。
若い頃は歳をとることをポジティブにとらえることができなかったが、歳を重ねるごとに魅力を増していくせっちゃんを見て、私もそんな風になりたいと前向きに誕生日を迎えられるようになった。また、どんな時勢の中でもひたむきに自分の音楽を創り続ける姿を見て、自分らしく、自分のペースで生きていくしかないのだと覚悟することができた。10年先を歩むせっちゃんは、未来に対する漠然とした不安を振り払い、その道を穏やかな光で照らしてくれる人生の水先案内人のような存在なのだと思う。次の10年もせっちゃんのように飄々と、でも決して妥協はせずに生きていきたい。
2021.4.16投稿