『悲しい本』(あかね書房)
今日は父の誕生日だ。もう祝うことのできない誕生日。たくさんの思い出がある日だから、喪失感が大きい。そんな日に読みたくなるのが『悲しい本』だ。
『葉っぱのフレディ』や『わすれられないおくりもの』など、死に向き合う絵本はこれまで何冊か紹介してきたが、この『悲しい本』は今までとは少し趣が異なる絵本である。この本は好き嫌いがわかれると思うし、子供というより大人向きの絵本なのでおすすめ絵本として紹介することはしていなかったのだが、今日読んで癒されたのでやはり載せておくことにした。
この絵本の語り手は息子を亡くした父親だ。悲嘆にくれる男の姿を、男自身の言葉で綴っている。
どこもかしこも悲しい。からだじゅうが、悲しい。
男は自分を残して死んだ息子に腹を立てたり、激情的にむちゃくちゃなことをしたり、悲しみをやり過ごす方法を探したり、悲しみについて考えたりしながら日々を過ごす。
誰にも、なにも話したくないときもある。
誰にも。どんな人にも。誰ひとり。
ひとりで考えたい。
私の悲しみだから。ほかの誰のものでもないのだから。
男の心に住みついてしまった悲しみは消えることはないだろう。しかし男は、どうしようもない悲しみに押しつぶされそうになりながらも、消え失せてしまいたいと願いながらも、生き続けるのだと思う。息子と過ごした楽しい日々の思い出が、大好きな誕生日の思い出が男の心を照らしてくれるかぎり。
父が亡くなり2年が経った。
なんとか母を元気付けようと励ましてきたし、母も頑張ってくれているが、悲しみが癒えることはなかった。そのことをずっと不甲斐なく感じてきたのだが、この本を読んで、悲しみは無理に癒さなくてもよいのかもしれないと思えるようになった。
2019.11.20投稿