『ピーターラビットの絵本』(福音館書店)
先日ななちと映画『ピーターラビット』を見に行った。前に予告を見た時「これがピーターラビット??」とぎょっとしたのだが、ななちは面白そう!と興味津々で、公開したら行きたいとせがまれていたのだ。
映画では「たいへんないたずらっこ」のピーターは、「かなりのワル」に成長し、マクレガーおじいさんの甥っ子と壮絶なバトルを繰り広げていた。「今のピーターの『やったか?』のセリフは、明らかに『殺ったか?』だったよね?」と思うくらい、本気でマクレガー氏を倒しにいっていた。
基本的に『ホームアローン』のようなドタバタコメディーだが、ちょっぴりハートフルな要素もあったりする、実にハリウッドらしいピーターラビットだった。個人的にはCGだということを忘れてしまいそうになる、表情豊かで躍動感のある動物たちがとても印象的だった。
そんな訳で久しぶりの絵本紹介はビアトリクス・ポター作の『ピーターラビットの絵本』。
この絵本の魅力は何と言ってもピーター達をはじめとする動物達の挿絵の美しさであろう。ピーターやその家族達は、洋服を着て買い物に行くなど擬人化されて描かれているにも関わらず、体の構造や毛の質感などはとても写実的でうさぎそのものだ。全くデフォルメせず、自然に擬人化しているという点が、ビアトリクス・ポターの絵の魅力だと思う。
ピータラビットの絵本は全24巻。第1集1巻目がピーターラビットのおはなし、2巻は映画にもピーターラビットの良き相棒として登場したいとこのベンジャミンバニーのおはなし、3巻目はピーターの妹フロプシーの子供達のおはなしが収録されている。
いずれのお話も、ピーター達がマクレガーさんに捕まりそうになりながらもなんとか逃げ出してくる、というストーリーであるが、1,2巻と3巻とではエンディングが異なっていることに気がついた。
ピーター達がマクレガーさんの畑の野菜を盗んで食べた1,2巻は、お腹を壊したり、お父さんにお尻を叩かれたりと、いずれもうさぎ達が罰を受ける結末になっている。しかし、ゴミ捨て場にあったレタスを食べていた子うさぎをマクレガーさんが捕まえた3巻は、うさぎ達に出し抜かれマクレガーさんが痛い目をみるという結末になっている。つまり、相手の生活領域を侵した方が罰を受ける、という形になっているのだ。
身近なところに野生のうさぎが生息していない日本では、うさぎは可愛いペットというイメージだが、イギリスの田園地帯ではうさぎは身近な野生動物だ。19世紀から20世紀にかけては、社会問題になるほどうさぎが増えすぎ、畑を荒らす害獣として駆除政策がとられていたらしい。
そんな時代に作られたピーターラビット。ビクトリアス・ポターはうさぎを愛らしく擬人化した作品に、お互いの生活領域を侵さず、共存していこうというメッセージを込めたのではないだろうか。
2018.6.30投稿