絵本レビュー:『しんでくれた』(佼成出版社)

衝撃的なタイトルが目をひき、思わず手に取ってしまった一冊。表紙のハンバーグの絵を見て、なんとなく絵本の趣旨は察しがついた。
この絵本は、谷川俊太郎さんの詩を絵本化したものであり、テーマは「いただきます」の精神と命の重さだ。うしが死んでくれたおかげで、「ぼく」はハンバーグを食べることができる。普段何気なく食べているソーセージやナゲット、お刺身も、元は豚や鶏や魚であり、それらは食べられるために死んだ…という事を私達は忘れがちだ。

きれいにスライスされ、パックに入ってスーパーに並んでいる肉や魚を買う生活の中では、それらが、元々は自分達と同じく生きていた動物である…という事を意識する事は難しい。この絵本は、その事を思い出させ、私達の命は、多くの動物の犠牲の上に成り立っているのだという事実を突きつけるものである。

それ故、この絵本は、子供よっては大きなトラウマとなるかもしれない。デリケートな子の場合、この絵本がきっかけとなり、肉や魚を食べる事に大きな抵抗を持ってしまう可能性があるだろう。そのため、この絵本は万人向けのおすすめ絵本とは言い難い。まず親である大人が読み、自分の子供の性格を考慮した上で、読み聞かせるかどうかを決めてほしいと思う。

個人的には、とても良い本だと思った。牛や豚は食べられるために死んでくれた。だからこそ、私達は「いただきます」と言って、その命に感謝し、残さず食べなければならない。この絵本は、「いただきます」の本当の意味を教えてくれる。

そしてもう一つ、多くの命を犠牲にして生きているのだから、私達はその命を大切にしなければならない、ということも教えてくれる。「ぼく」は、死んでもだれも食べてはくれないから、死んであげても、なんの役にも立たない。それどころか、死んだら、家族や友達、多くの人を悲しませてしまう。それに、今まで犠牲にしてきた多くの命に対しても失礼なことだ。

命の重さを理解していれば、くだらない理由や一時の感情で人を殺してしまうこともないのではないだろうか。犠牲にしてきた命を思えば、どん底にいて、絶望していても、自ら命を絶つことを踏みとどまることができるかもしれない。

多くの動物の命をいただいてきた「ぼく」達ができること、すべきこと。その答えを、親子で一緒に考えてみてはどうだろうか。