『そらいろのたね』(福音館書店)
ななちの学校では今日、野菜の苗植えをするらしい。一人一つのプランターで自分の好きな野菜を育て、世話をしながら観察をするという「生活」の授業の一環のようだ。ななちは「実がなったら、これで肉詰め作ってね!」と、小さな花の咲いたピーマンを大切そうに持って行った。
自分の植えた植物を世話して、その成長を見るのはとても嬉しいことである。この絵本の主人公、ゆうじも「そらいろのたね」を大切に育てていた。
野原で模型飛行機をとばしていたゆうじは、森のきつねと出会い、きつねの宝物だという「そらいろのたね」と模型飛行機を交換する。早速庭の真ん中にたねを植え水をあげると、なんと翌日には豆くらいのそらいろの家が出てきたのである。たねから「うちがさいた」というとても斬新な展開にななちは「えーっ!?」と言いながらもワクワクしている感じだった。
喜んで世話をするゆうじのおかげで家は少しずつ大きくなっていく。最初はひよこが一匹しか入ることのできない小さな家だったのに、家は日に日に大きくなる。ページをめくるたびに、いろんな動物たちがやってきて家に入り、その分家が大きく、そして立派になっていく様子がとても楽しげだ。次から次へとやってくる動物の中に、黄色いバスケットをもったぐりとぐらの姿を見つけた時は、ななちだけでなく私まで思わず微笑んでしまった。
ゆうじが森中の動物達や町中の子供達を喜んで招き入れたおかげで、お城のような立派になったそらいろのいえ。それを見たきつねは、模型飛行機を返すから自分のたねから育ったその家を返せと言い出す…どこか猿蟹合戦を思わせる展開だ。大団円が多い中川李枝子さんには珍しく、家を独り占めにしたきつねにバチがあたったところで物語は終わる。
どうしてこの終わり方なのかな…と私なりに考えてみたのだが…これはきっとテーマが「たね」だからなのではないだろうか。花は枯れるが、たねを残す。そのたねを育てればまた新しい花が咲く。同じように、家は消えてしまったがたねはきっと残っているはずだ。
「意地悪をしたきつねくん、反省して、今度はゆうじと一緒にそらいろのたねを育てるんじゃないかな…」絵本を読み終わった後、親子でそんな話をすれば、きっとそこから新しい「そらいろのいえ」の物語が咲くと思う。
2014.5.7投稿