絵本レビューとWwbと…

『からすのてんぷらやさん』(偕成社)

この絵本は「からすのパンやさん」というシリーズもののようだ。ななちが幼稚園で他のシリーズを読んでいたらしく、先日書店で「これは幼稚園になかったやつだ!」と見つけてきた。それもそのはず、今年の5月に発行されたばかりだ。

この絵本は実に特徴的だった。物語がどん底から始まるのである。からすの天ぷら屋さんが家事になり店は全焼、奥さんは行方不明、跡取り息子のイワくんは目を怪我してしまって天ぷらが作れない…。天ぷら屋の大将は「おしめえだわ。」と泣き崩れている。

そこにやってきたイワくんの友達ジロくんとレモンさんが、頑張って店を立て直そうと励ましにくる。仲間を集め、店を建て直し、道具を集め…そしてイワくんに代わって、天ぷら作りの修行を始める。素揚げから、唐揚げ、天ぷら、フライ…大将の授業は子供達にわかりやすく揚げ物の種類の違いや作り方を教えてくれる。

天ぷらの秘伝を全部伝授し終えた日、行方不明だった奥さんが入院した病院から帰ってくる。イワくんの目の怪我も治り、新しい天ぷら屋さんのオープンをみんなで祝う。そして最後はとっておきのハッピーエンドが待っている。

この絵本が描いているのは、まさに東日本大震災後の日本だと思った。作者も震災の際「人間の社会は、ただ大勢いるのではなく、たがいに助けあい、補いあって、「社会」がなりたつことを知りました。」と語っている。

様々な所でサイトが炎上、SNS疲れ、LINEいじめなど、人と人との関係がおかしくなってきているのではないかと言われている現代社会であるが、震災後、人々はボランティア活動や義援金・義援物質など、それぞれの形で支援し、助け合っていこうと必死に頑張っていたと思う。ここに出てくるからす君たちのように…。匿名性の高いネット社会でも、常にそうした気持ちをもち続けることが大切なのかもしれない。

2013.8.29投稿

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