訪問着
今日は久しぶりにななちをパパに預けて単身上京した。学生時代の友人とランチしがてら、着物のリサイクルショップに訪問着を見に行ったのだ。友人曰く、着物のリサイクルショップには、仕立てて一度も着ていない新古品が並ぶこともあり、サイズと色が合えばレンタルするよりずっとお得だというのだ。もし良い着物があれば、来春のななちの卒園、弟の結婚式、ななちの七五三、と来年中に3回は着れて、完全に元は取れる。
そんな訳で、素敵な出会いを期待しつつ、新宿伊勢丹へ。なんとなく敷居が高くて、いつも遠目にした見た事のない呉服ゾーンへ勝手知ったる様子で入っていく友人が実に頼もしかった。
出迎えてくれたのは、いかにもベテランな感じ品の良い販売員さん。「来春の弟の結婚式(本来は色留袖)に着て、かつ卒園式(本来は色無地)や七五三にも着られるような品のある10万円前後の訪問着が欲しい」という私のムチャぶりに苦笑しつつも、一着の訪問着を選んで出してくれた。淡い萌葱色に細い熨斗文の入った上品な一着。地模様も美しく、元値は相当したと思われる。
今まで全く着た事のない色だったが、羽織ってみると、驚くほどあった。私のかなりボーイッシュなショートヘアにもマッチしている。これなら頑張って髪を伸ばす必要もなさそうだ。幸いなことにサイズもぴったりだ。しかも一度も着ていない、しつけ糸までついた新古品。「ああ、やっぱり。これが一番いいですよ。他のはもう着る必要ないと思いますよ。」と自信満々の販売員さん。 しかし、せっかくの機会なので色々見てみたい私は、とりあえずおとり置きしてもらい、他のお店も回ってみることにした。
3時間後、結局私は伊勢丹に戻り、その萌葱色の訪問着を買った。一目見ただけで、サイズ、色柄ともにベストの着物を選ぶなんて…さすがプロだ。職人技といってもいい。素直に「すごいですね。」と褒めると、販売員さんは「それが、私の仕事ですから。」と微笑んだ。
訪問着の写メを母に送ったところ、早速母が似合いそうな袋帯を出してくれた。それは、販売員さん一押しの白地に華やかな柄の入った帯だった。37年前に、祖母が母のために伊勢丹で買ったものだという。
新古品でサイズが合うことだけでも珍しいのに、色柄も合い、おまけにそしてそれにぴったりの帯まであるなんて、なんだか運命的なものを感じた。
忙しい中着物探しに付き合ってくれた友人、ムチャぶりに笑って答えてくれた販売員さん、素敵な帯を買ってくれた祖母、それを大切に保管してくれていた母…。色々な人に感謝したい一日だった。
2012.11.18投稿