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『ドリトル先生』(岩波書店)

今年ななちが一番ハマって読んだ本が、動物と話ができる獣医のドリトル先生が、動物達と共に様々な冒険をする物語『ドリトル先生』シリーズだ。

子供の頃に読んだ時には、私もななちと同じく、オウムや犬、サル、ブタ、ワニに至るまで、いろいろな動物と自由に話ができるドリトル先生ってすごい!という純粋な憧れしかなかったが、大人になった今、改めて読み返してみると、当時は見えなかった色々なものが見えてくる。

「ドリトル先生」の名前は、井伏鱒二氏がこの物語を翻訳した際につけた名前であり、原文では「Dr. Dolittle」と表記されている。つまりdo little…なまけ者の医者、ヤブ医者という意味が込められているのだ。このことからも、ドリトル先生は、元々、一癖ある人物として設定されていると言えるだろう。

ドリトル先生は、動物への愛情は深く、義理堅い善人ではあるのだが、動物達が心配するくらい、お金に執着がない。むしろ「金がないと、何も手に入れることができない」人間社会というものを嫌悪している。「金払いのよい人間よりも、動物のほうが、かわいい」と断言し、実の妹にも愛想を尽かされ出て行かれてしまうほどだ。

少年のような純粋さゆえ、ともすれば社会生活不適合者となりかねないドリトル先生を社会につなぎとめているのは、現実的で賢いオウムのポリネシアを筆頭とする動物達だ。動物達は、金がなくては生きることさえ難しい人間社会を「奇妙なもの」としながらも、敬愛するドリトル先生のために、知恵を絞り、自分達ができることをして先生をフォローしようとする。真正直なドリトル先生に対し、生きていくためには金を稼ぐ必要があり、時には人を出し抜いたりすることも必要だと説くその姿は、ある意味ドリトル先生よりも人間臭い。

動物達のためなら、現実や我が身を顧みず助けてやろうとする善意の塊のようなドリトル先生と、その先生を敬愛しながらも、現実的な視点に立ち、先生をフォローする個性豊かな動物達。彼らが織りなすドタバタ冒険物語が描いているのは…人間社会の世知辛さと温かみ、そのものなのではないだろうか。

2016.12.19投稿

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