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『このあと どうしちゃおう』(ブロンズ新社)



『このあと どうしちゃおう』は、ヨシタケシンスケさんの最新作の絵本だ。思わずくすりと笑ってしまう突飛なストーリーを展開するヨシタケさんの絵本は、ふざけているように見えて、実はとても深いテーマを扱っている。この絵本のテーマは「死」だ。

亡くなったおじいちゃんが残したノート。そこには、死んだら行くであろうあの世の様子や、あの世でやりたい事がおもしろおかしく記されていた。「ぼく」はそのノートを読みながらあの世というものに思いを馳せ、やがて「おじいちゃんはほんとうは怖かったのかも…」ということに気がつく。

誰もが経験するけれど、誰もが知らない「死ぬ」という体験。人の死に対面することはあっても、自分が死を体験するのは自分が死ぬ時、ただ一度だけ。それゆえ、死んだらこの自我はどうなるのか、魂と呼ばれるものは存在するのか、あの世と呼ばれるものはあるのか…本当のところは誰にもわからない。

だからこそ、人は未知なる「死」という体験を恐れ、忌避する。このおじいちゃんのノートは、未知だから恐ろしく感じる「死」というものを、明るく楽しいものだと前向きに考える事で、いずれ訪れるその時の恐怖を軽減する、という役割を果たしている。そしてそれは、世界中に誕生した様々な宗教が果たしている役割と同じだと言えるだろう。死を恐れすぎる事はない。しかし、死後の世界がどうなっているかわからない以上、生きている「今」この瞬間を大切にしてほしい…そんなメッセージが込められているように感じた。

夏休み明け、新学期の始まるこの時期に、子供の自殺が多くなるという。思春期という、ただでさえ精神的に不安定なこの時期に、心が砕けれしまうくらい辛いことがあると「死」に救いを求めてしまうことがあるのかもしれない。しかし「死」はそのうち必ず訪れるものなのなのだから…できれば自らの手でそれを招くようなことはせず、別の逃げ道を選んでほしいと思う。

2016.9.2投稿

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