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リサとガスパールのレストラン

『リサとガスパールのレストラン』(ブロンズ新社)

キャラクターだけは前から知っていたリサとガスパール。こんなに可愛いのだからお話もきっとかわいいお話に違いない…ということでななちが絵本に興味を持ち出してすぐに買ったのだが…意外ッ!リサは「ワル」だった。

パリ育ちの都会っ子リサが親戚のおばさんのお家に遊びに行く。景色の感じからすると港町、マルセイユあたりだろうか。お気に入りのレストランにガスパールを連れて行こうと張り切るリサだったが、なんとオーナーが変わり、シーフードレストランに変わっていた。食べたかったハンバーガーもピザもフライドポテトもない。「しーんじられない!」とリサはがっかり、急にお腹が一杯になってしまう。

退屈しのぎに水槽を見に行くことにしたリサとガスパールは、途中で脱線し、いたずらを思いついてしまう。「ねぇ コショーのふたをゆるめちゃおうか?」リサ、なかなかのワルである。早速コショーを取ろうと手を伸ばしたガスパールだが、うっかり手をひっかけテーブルの上にマスタードをぶちまけてしまう。ここでも、リサは動じず「おさらで かくしちゃえば いいんじゃない?」と隠蔽工作をし、何事もなかったように席にもどり、美味しくデザートをいただく…。リサ、可愛い白い顔をしているのに、中身はなかなか黒い。

日本の幼児絵本の場合、心優しく穏やかで、聞きわけの良い「良い子」が主人公である場合が多い。ところがこのリサはおませで口が達者な上、かなりのイタズラものだ。

もちろん、日本にも『ノンタン』のようなやんちゃ坊主が主人公の絵本もあるが、リサとは少し性質が異なる。ノンタンには「反省」があるのだ。ノンタンのお話は、ノンタンがわがままを言ったりずるいことをしたりした結果、自分が困ることになり、反省して行いを改め、最後はハッピーエンドという流れが多い。つまり、ノンタンの場合は、やんちゃで奔放な等身大の子供に近い姿を描くことによって、一度子供の心に寄り添い、その上で教訓となるメッセージを強く伝えようとしているのだ。

ところが、この絵本は違う。イタズラはやりっぱなしだし、最後も、次こそはうまくコショーのふたをゆるめてやろうと締めくくられている。リサに反省の気配はない。このエンディングに違和感を持つ保護者は多いのではないかと思われる。
この違いは何か、と考えた時に私は日本とフランスの絵本の発展の仕方の違いなのではないかと思った。日本の絵本は、江戸時代の「赤本」という昔ばなしを題材にした娯楽本が源流となっている。その後、欧米の絵本が数多く翻訳されるようになり、絵雑誌の「コドモノクニ」や月刊「キンダーブック」が誕生、幼稚園で普及されるようになった。幼稚園で利用されるという流れで絵本の内容も自然と教育的な要素が強くなっていったに違いない。このように、日本の絵本は教育ツールの一つとして発展し、娯楽的な読み物は「漫画」という別の形で独自に発展していった。

一方、フランスでは絵本はあくまで娯楽の一つとして発展してきた。フランス絵本の代表作『ババール』もユーモアと笑いが溢れる、冒険小説的なストーリーであることからもこのことが伺える。

つまり、このリサとガスパールは、「子供がワクワクしながら楽しく読むこと」を目的として作られており、日本の幼児絵本に多く見られる教訓的なものや説教的なものは含まれていないのだ。だからこそ、リサのイタズラは大胆で、激しく、それを読む子供達に「そんなことをやっちゃうの?!」とドキドキとワクワクを与えてくれるのだろう。まさに「俺達に出来ないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる! あこがれるゥ!」の心境だと言える。

年齢的にも、いい事と悪い事がある程度はっきりわかるようになってから読む方が、リサのワルさが理解でき、より楽しむことができると思う。日本の絵本とは一味違う、フランス産の笑いとエスプリを楽しんで欲しい。

2014.2.25投稿

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